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2008-08-27 Wed 11:21
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雨の日の図書館が好き。
本たちが水分を含んで、空気中にかびくさいような古びた本のにおいがいつもより強く感じられる。 深呼吸しているみたいに。 雨の日の図書館は、静か。 磨り減って歩くとミシミシ音を立てる飴色の板敷きの床も、雨の日は音がしないし、黄ばんだしっくいの壁が、本をめくる音をいつもより吸いとっているのかもしれない。 雨の日の図書館は、いつもよりほんの少し混む。 雨が降ると、みんな図書館の存在を思い出すらしい。 雨の日は畑仕事をお休みする人が多いだけかもしれないけど。 それに混むといっても、今私が座っている貸し出しカウンターから見える人たちは、全部で10人。 人口1000人にも満たない村なんだから、仕方ない。 でも100人に1人が、この図書館に来て、今本を手にとっていると思えばすごいことのようにも思える。 私は立ち上がって書架に行き、
という本を間違いなく探し当てる。 貸し出し記録のない全国市町村要覧が、13年度版まで陳列されている。 それ以前の版は、閉架書庫に入っていたはずだ。 この本によれば、一番人口が多いのが、横浜市で、3627420人。(ちなみに、一番人口が少ないのが、東京都 青ヶ島村の211人。) 私は書架を移動して、目当ての
という本を手に取る。 やっぱり。 横浜はここの約36000倍の人が住んでいるのに、図書館の数はたったの18。 21500人で、1つの図書館を利用しなければならない計算。 皆が図書館に押し寄せてきて、床が抜ける図を想像をして、にやりとする。 それに比べたら、1000人で1つの図書館というのは、文化的に高いレベル。 横浜中央図書館の蔵書が、1392000冊。横浜市民の数で割ると、一人当たり約2.6冊。 ここの村立図書館には、15000冊の蔵書があり、一人当たり15冊の計算。 すごい。 私は、ていねいに本を元の棚に戻して、小さくため息をついた。 残念ながら、ここの蔵書の大半は戦前の本だ。 この村の名士、洞夢(ホラム)様の蔵書だったものだ。 図書館自体も洞夢様の書庫、兼、御めかけさんのお屋敷だったもので、大正期に建てられた天井の高い暖炉のある和洋折衷の建物は、村の文化財にも指定されている。 御めかけさんが亡くなった後、洞夢様は、自分の蔵書を、図書館のないこの村に建物ごと開放した。 1978年、洞夢様は「一冊の本も処分してはならぬ」という遺言を残して鬼籍に入られ、その後、蔵書の管理をする者もなく、化け物屋敷の様相を呈してきていたが、洞夢様の没後10年を機に、洞夢様の偉業を称える行事が行われ、洞夢様の「農村にも文化を!」の御意志を継がなければならないという機運が高まり、村が買い取る運びとなった。 修繕、改造をほどこして村立図書館とし、1989年に県知事も招待する大々的なセレモニーで、図書館は開館したそうな。 時も、バブルがはじける寸前のこと。 洞夢様の名から1字いただいて「夢図書館」と名付けられた。 また、「一冊の本も処分してはならぬ」という遺言は現在にいたるまで、頑なに守られている。 この村の名前? それを言ったら、私が勤務中にブログ書いてることが、ばれちゃうでしょ。 「夢村」としておきましょう。 |
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